奈良県奈良市(日本)、浙江省寧波市(中国)、済州特別自治道(韓国)の3都市は、2016年の1年間、「東アジア文化都市」として多彩な交流事業を展開した。閉幕にあたり、3都市は「東アジア文化都市2016奈良宣言」、「東アジア文化都市寧波提議」、「東アジア文化都市2016済州文化宣言」を採択し、今後の文化交流の継続について約束した。これを受けて、現在3都市は、それぞれの地域で青少年交流事業を実施し、そこにパートナー都市が参加する形態で交流行事を実施している。
一方、済州道は、各種行事への参加・招待を通じて、別の年の東アジア文化都市との交流も活発に実施しているのが特徴である。また、済州道は日中韓をテーマにした多様な国際イベントを開催し、東アジア文化都市間に限らず他の日中の都市とも交流を拡大している。寧波市は、済州道、奈良市における交流行事に青少年を派遣するとともに、同市にて開催される青少年交流プログラム等の行事に奈良市や済州道の学生を招待している。また、同地で行われた文化行事に奈良市と済州道の学生を招いた実績もある。
- 2016年12月:寧波提議、奈良宣言、済州文化宣言に署名、交流継続へ
- 奈良市、寧波市、済州特別自治道は2016年東アジア文化都市として活動を終え、1年間の協力を土台に、日中韓の都市の間で持続的な文化交流を行うため、「東アジア文化都市寧波提議」(12月7日)、「東アジア文化都市2016済州文化宣言」(12月16日)、「東アジア文化都市2016奈良宣言」(12月26日)にそれぞれ署名をした。3都市はこの合意に基づき現在まで活発な青少年交流と文化交流を推進している。
- 奈良市による取組み
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〈東アジア文化創造NARAクラス〉
奈良市は、寧波市及び済州道の協力のもと、青少年交流事業を実施している。募集した奈良の若者は、まず、講義とガイダンスで日中韓の文化を学ぶと同時に、奈良を海外の人に紹介できるよう学習する。続いて、中韓から招いた若者に、奈良の文化を体験し、相互理解と交流を深める。さらに、希望者は、寧波市又は済州道を訪問し、各都市で開催される青少年交流プログラムに参加する。最後に、全体の報告会を実施する形となっている。
本プログラムに参加した学生たちを、一定期間に複数の段階で行事に参加させることを通じて、より深く学び、相互理解を増進させる効果がみられる。また、3国で持ち回りで実施するのではなく、パートナー都市が実施する行事への参加を通じて事業を展開している点も特徴である。
2019年の実施例
(2018年以前も実施)
①「東アジア学びの扉」(6月16日:参加者ガイダンス、7月7日:フィールドワークとワークショップ、7月21日:ワークショップの成果発表会)
②「日中韓 青少年交流プログラムin NARA」(8月24日及び25日、日中韓の大学生と高校生(奈良市から20人、寧波市から10人、済州特別自治道から10人)が奈良市に集まり、「自身の地域、まちの隠れた魅力」をテーマに、写真+詩+音楽の形式で発表、演劇で意思疎通をするプログラム等、文化交流を実施)
③「東アジアへの旅」(寧波市青少年交流プログラムへの参加(8月8日~11日)済州特別自治道青少年文化芸術キャンプへの参加(9月20日~23日)
④ プログラム報告会 (9月29日)
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2020年の実施例
(オン・オフライン開催。新型コロナウイルスの感染拡大により当該年度は寧波市の「日中韓交流プログラムin Ningbo」及び済州特別自治道の「日中韓文化都市済州青少年文化キャンプ」と連携し3都市が共同主催した。)
① 参加者ガイダンス・3都市交流スタートプログラム(9月21日):奈良市の大学生や高校生16人、寧波市の大学生や高校生21人、済州特別自治道の大学生や高校生12人が北九州市で行われた現地参加者ガイダンス・3都市交流スタートプログラムにオフライン参加。
② リモート型グループワーク(9月27日、10月24日):各参加者がテレビ会議の形式で行われたグループワークに参加し、各グループワークの内容が各都市にSkypeで中継された。グループワークは大きく「『コロナ』と私たちの生活 街中リサーチ」、「自分がモデルの観光ポスターを作ろう!」、「私のまちのソウルフード!作って食べて、料理レポート」といった三つのテーマに分かれる。
③ 成果発表会(11月23日):奈良市の大学生や高校生18人、寧波市の大学生や高校生21人、済州特別自治道の大学生や高校生12人が北九州市現地にて成果発表会にオフライン参加。
④ プログラム報告会 (9月29日)
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2021年の実施例
((オン・オフライン開催)
① 参加者ガイダンス・3都市交流スタートプログラム(8月28日、奈良市主催):奈良市11人、寧波市12人、済州道10人の参加者がオリエンテーション及び自己紹介、都市紹介クイズ等のオンライン活動に参加
② リモート型グループワーク(9月11日、10月30日、済州道主催):参加者がグループ別に分かれてオンラインディスカッションに参加
③ 音楽交流プログラム(9月25日、済州道):3都市に分かれて済州で作曲されたオリジナル曲に作詞する
④ 奈良市アート体験ツアー(10月9日):参加者限定で奈良市の西大寺などでワークショップを実施
⑤ 3都市書道交流プログラム(10月23日、寧波市主催):書道講師によるレクチャーの後、好きな漢字を毛筆
⑥ 成果発表会(11月13日、済州道主催):グループワークの成果をPPT形式でグループごとに発表
- 寧波市による取組み
- 寧波市では寧波国際大学生祭リや青少年交流プログラムなどを通じて、奈良市、済州特別自治道とそれぞれ活発な交流を続けてきた。また、毎年多様なテーマとプログラムに基づいて日中韓交流事業を運営している。
イベント名 | 日程 | 内容 |
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寧波国際大学生祝祭 (済州道の大学生を招待) |
2017年6月 2018年7月 2019年6月 2021年4月 |
2012年から開催されている同イベントは日中韓を含めた約200人の海外大学生と中国内の大学に在学中の留学生が約4日間交流するプログラム。中国文化体験、現地訪問、寧波市の大学生との交流等、様々な活動に参加する |
2地域の青少年交流プログラム (奈良市の高校生を招待) |
2017年11月 | 浙江省紡績職業技術学園への訪問、中国書画、伝統工芸等の体験 |
2018年9月 | 博物館、天一閣、寧波市溶鋼職業高等学校への訪問、月餅作り体験 | |
2019年 | 「日中韓交流プログラムin Ningbo」として実施(下記参照) | |
日中韓交流プログラムin Ningbo | 2017年11月 | 「日中韓の陶芸伝承者の展示会」と「日中韓伝統交流」(展示・ワークショップ) |
2018年6月 | 寧波市象山県第1回海洋漁業文化保護祭に奈良市、済州道、清州市(2015年文化都市)参加 | |
2019年8月 | 「鏡像寧波」*日中韓学生の写真文化交流プログラム開催 専門家と共に寧波の歴史・文化遺跡を見学し、チーム別に撮影した展示作品を発表 *鏡像: 鏡に映して左右が反転している状態 |
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2020年9〜11月 | 「初心・愛心・童心」をテーマに、奈良市・寧波市・済州道から各20人の大学生と高校生混合チームが結成され、毎月オンライン活動に参加する。「都市観光ポスター」、「コロナと私たちの生活」、「故郷美食料理」等をテーマに交流活動実施 | |
2021年8〜11月 | 「3都市間の友情」を象徴する歌の作詞、寧波市の「四知」書道等多様な文化交流活動をオン・オフラインで実施 |
- 2021年「第6回日中韓文化都市済州青少年文化キャンプ」に参加した中国人学生の姿(出典:寧波市)
- 2021年「第6回日中韓文化都市済州青少年文化キャンプ」に参加した中国人学生の姿(出典:寧波市)
- 済州特別自治道による取組み
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〈「済州文化大使」〉
このプログラムは東アジア文化都市の文化交流事業の一環として行なっている。日中韓青少年文化芸術キャンプなど、国際文化交流に参加する青少年たちのような済州の文化についての深い理解と国際理解を深めた人材を養成することを目指す教育プログラムである。
済州道とUNITAR(国連訓練調査研究所)済州国際研修センターが、2018年から共同で実施している。約40人の学生が選抜され、済州文化クラス(国内、年4回実施)と日中韓青少年文化キャンプ(国外)など、多様な活動を行なっている。
〈日中韓文化都市済州青少年文化キャンプ〉
2016年以降毎年4日間かけて実施している同キャンプは、初期には東アジア文化都市のフォローアップ事業の一環として3都市を中心に運営されていたが、2018年からは済州道と交流のある各日中韓の各都市から100人前後の青少年が参加する大規模行事となっている。
回 | 日程 | 参加地域 (東アジア文化都市指定年度) |
内容 |
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第1回 | 2016年7月 26〜28日 | 日本:奈良(2016) 中国:寧波(2016) 韓国:済州(2016) |
書道と写真の部門に分け、各分野の済州の芸術家と交流 |
第2回 | 2017年8月 16〜19日 | 日本 : 奈良 中国 : 寧波 韓国 : 済州 |
「持続可能な海の話」をテーマに、音楽・写真・美術の3分野のメンターが参加。50人の日中韓青少年に現場見学、討論、ワークショップ等の多様なプログラムを提供 |
第3回 | 2018年 5月 9〜12日 | 日本: 沖縄(奈良市は済州で開催された別のイベントに出席のため不参加) 中国:泉州(2014)・寧波・大連・上海 韓国:済州・光州(2014)・清州(2015)・大邱(2017) |
「アップサイクリングを通じた持続可能な生活と芸術」をテーマに日中韓の青少年が、音楽・美術・映像の3チームに分かれ、分野別にメンターと一緒にプロジェクトを実施 |
第4回 | 2019年 9月 20〜23日 | 日本: 奈良, 山梨, 佐賀 中国: 寧波 韓国: 済州・清州(2015) |
「地球の話」をテーマに日中韓青少年が写真・音楽・美術・ダンスの4チームに分かれ、使い捨て用品の削減、海水を活用した写真の焼き増し体験、地球模型の製作など環境に優しい芸術プロジェクトを実施 |
第5回 | 2020年 9月21日〜11月23日 | 日本: 奈良 中国: 寧波 韓国: 済州 |
「一杯の心」をテーマに50人の日中韓青少年が7つのチームに分かれ、オリエンテーション・文化授業・グループワークショップを行い成果共有会で共に作った成果物を共有(オンラインで合計6回開催) |
第6回 | 2021年 8月13日〜11月13日 | 日本: 奈良 中国: 寧波 韓国: 済州 |
総勢34チームの日中韓青少年が5つのチームに分かれ、音楽ワークショップ・チーム別ネットワーキング・成果共有会を実施(オンラインで合計6回開催) |
第7回* | 2022年 5〜11月[予定] | 日本: 奈良 中国: 寧波 韓国: 済州 |
未定 |
- 2020年「第6回日中韓文化都市済州青少年文化キャンプ」(写真提供:済州特別自治道)
〈耽羅文化祭における国際文化交流イベント〉
済州最大の文化行事「耽羅文化祭」に、過去の東アジア文化都市等の日中韓アーティストを招き、公演を行うとともに、地元の小学校で「子供たちへの日中韓文化体験教室」(公演とワークショップ)を実施している。この文化教室は、2016年に参加した日本(奈良)側公演者が、ぜひ子ども達に教えたいと申し出たことから実現し、好評だったことからその後定着するに至ったもの。毎年、済州内の小学校を一つ選定し、日中韓の伝統文化芸術の公演、日中の文化教室などを行なっている。済州の文化教室に招かれた他の日本側都市が、この方法を逆に日本の文化交流行事に取り入れた事例もある。
〈2019年参加生徒の感想〉
▲中国公演団の龍舞がかっこよく、中国に旅行に行きたくなった。▲日本の踊りを実際に踊ることができて嬉しかった。公演団の先生がハイタッチしてくれたことが記憶に残っている。▲また機会があれば、違う体験もしてみたい。
- 「子供たちへの日中韓文化体験教室」(寧波市)中国「牡丹」絵画プログラム(写真提供:済州特別自治道)
これまでの開催状況
日程 | 日中参加地域(東アジア文化都市指定年度) |
---|---|
2016年 | 奈良(2016) |
2017年 | 横浜(2014)、 奈良(2016)、泉州(2014)、寧波(2016) |
2018年 10月 | 京都(2017)、泉州、寧波、 上海、 海南省 |
2019年 10月 | 青森、東京・泉州、寧波、上海、 海南省 |
2020年 10月 | 奈良、横浜、青森、北海道、泉州、寧波、西安(2019)、上海「COVID-19 & HUMANS」国際写真交流展へ写真出展 |
2021年 10月 | 青森、北海道、西安、寧波舞台芸術交流のための映像出展 |
〈2021年12月:日中韓東アジア文化都市奈良・寧波・済州芸術祭〉
済州特別自治道は2021年12月27日に奈良・寧波・済州の3都市間交流5周年を記念し特別企画公演を開催した。この企画は済州文化芸術振興院が主催し、韓国文化体育観光部の後援により企画され、「三色でよみがえる文化の和音」をテーマにオンライン形式で行われ、各都市を象徴する伝統音楽の源流を多様な音楽的な解釈により編曲し、クラシック・民謡・フュージョン韓国伝統国楽・ヒップホップ・ダンス等多様なパフォーマンスが行われた。
- 済州民謡を編曲し演奏している寧波の音楽家達の姿
(写真提供:済州特別自治道)